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画像は無外流、辻 月丹が延宝8年(1680年)に記したとされる「無外流真伝剣法訣」の十剣秘訣 の最終訣です
萬法歸一刀の表題、丸い輪のなかに 圓相
賛として下記の禅問答が記され、 更に参ぜよ三十年 としるされ、 文字の沙汰にあらず とあります
もともとの語源は禅語の「万法帰一」です
僧 問云
萬法歸一 一歸何處
老僧 答云
我在青州作一領布衫重七斤
(僧問う 万法一に帰す、一何れの所にか帰す 師云く
老僧青州に在って、一領の布衫を作る、重きこと七斤)
これは『碧巌録』へきがんろく 第四十五則の公案がオリジナルで、禅者である無外流剣法流祖 辻 月丹 に影響を与えたと考えられます
碧巌録は、中国の仏教書 別名に仏果圜悟禅師碧巌録 碧巌集とも呼ばれ、特に臨済宗において尊重される、代表的な公案集 全10巻からなるもので、禅者としての月丹自身の剣法を心法として言葉にしたものであることは明らかです
では、萬法帰一 ばんぽうきいつ とはどのような意味をもつのでしょうか 萬法は一に帰す 萬法とは一切の存在は因縁によりて生ずる自然の理法であり、一とは万物の根源で、大宇宙のすべてのものは一から生じ、一に帰するとされている
その唯一絶対の当体はそのまま萬法に貫く道理でもある 従って萬法帰一とは天地万物のすべては唯一絶対の根源的真理に帰入することをいい、また森羅万象の一切はそれぞれに根源としての真理の道理が貫かれているとする
仏教ではこの一を真如 しんにょ といい、法性 ほっしょう といい、一心といい自性清浄心 じしょうしょうじょうしん という
浄、不浄・善悪・好悪など一切の分別も分かたない、一切合切を含むところの世界であり、そのままがまた実相でもある
この世の現象のすべては、絶対的実相から生じ出たものであるから、結局はその実相である 一 に還元されるのがまた道理である
華厳経の中の「一即一切、一切即一」の語はよく知られるものです これは、一つの微塵がそのまま宇宙の命を表し、また宇宙は一つの微塵もその命からはずさず、個と全体が有機的に統合する壮大な宇宙を示していると云うこと、だそうです
簡単に言えば、あらゆるものが一つにつながり、関わりあって存在しているということ
この考えを前提としてこの趙州の「萬法帰一」の問答が始まっています
ある若い雲水(僧)が老僧(趙州)に問う『すべてのものは一に帰すといいますが、それでは、その一はどこに行くのですか』 すると趙州は『わしが青州におったとき、一領(一枚)の布衫(ふさん・・短い衣)を作ったが、その重さが七斤(4.2kg)あったよ』と、さらりと答えた
常識的にみれば、趙州の答えは僧の問いとは何の関係も無い答えにしかみえない これではどなたでも何を言っているのさえ解らないでしょう 「さっぱり分かりません」と云うのも無理は無い
ただ、趙州が「一領の布衫の七斤」という言葉には単なる昔の思い出話ではなく極々日常の喫飯、起居や動作、一挙手一投足のすべてが一に帰すところである 太陽は毎日東から上るし、月は夜な夜な西に沈む 一がどこに帰すなどと野暮ったい屁理屈など無用のことだという境涯を表わした答えだと
このように、禅における問答は言語を絶した回答として常識を超えた問答、表現は決して珍しくはないということでしょう
“ 更に参ぜよ三十年 ” の意味するもの
「 世 」の文字、世とは時代、世代、年代を示す文字。世の文字は 「十」を三つ重ねた「 丗 」を原字とし、次の代へ継ぐまでの約三十年がもとの意味で、幾世代も続くことを表したものとして知られます 一生、生涯を意味するのです 剣と禅 すべてはここからはじまる のページ参照 *
“ 言葉の沙汰にあらず ”
言葉で言い尽くせること、ものではない
「無外流真伝剣法訣」は単なる剣の業の免許皆伝解説ではなく剣の業を表題とした、禅理を了知した剣者に授けるこころの訣(奥義書)、究極の一刀 という説に違いないのです
一円 に示す 歸一 初心に帰る
月旦が併修したとする 自鏡流居合 の祖 多賀自鏡軒盛政 が武術稽古の際に門弟達に授けたとされる四十首の道歌からなる 百足伝 の最後40首目には、
一つより百まで数へ学びては、
もとの初心となりにけるかな
と結んでおり
茶聖 千 利休宗易 は、「 利休道歌 」百首で、
稽古とは 一より習い十を知り
十よりかえるもとのその一
と詠んでいます
また、室町時代初期、父の観阿弥(觀阿彌陀佛)とともに猿楽( 申楽さるがく とも 現在の能 )を大成した
世阿弥 ぜあみ は、『 花鏡 かきょう 』という伝書に
しかれば当流に万能一徳の一句あり 初心忘るべからず この句、三ヶ条の口伝あり 是非とも初心忘るべからず 時々の初心忘るべからず 老後の初心忘るべからず この三、よくよく口伝すべし
初心忘るべからず と
敬称を略させていただきました
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